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余命宣告 [四方八方話]

今日の午後、元上司が余命宣告を受けたと噂を聞いた。

既に自分では何もできない状態になってしまっているらしい・・・
もちろん、寝たきり。


労働組合の集会があったが、
元上司に会わねば!と思い終業とともに会社を後にした。


病室は個室に移っていた。

ちょうど食事の時間で、奥さんが上司にご飯を食べさせていた。

こんばんわ。

と声をかけながら病室に入った。


元上司は私が誰だか分からない様子で

目をまんまるくさえてキョトンとしていた。

一生懸命、私が誰だか思い出そうとしている感じがした。

奥さんが、『誰だかわかる?』と聞いたら

震える手をテーブルにコツコツと叩きながら

『日本人だよ』と言った。

元上司は恥ずかしいとき、顔を合わせない。

上司の顔はTVに向いた。

ちょっと奥さんと雑談し、食事中ということもあり
帰ろうと声をかけたら

『磯野さん!』と突然私の名前を呼んでくれた。

思い出してくれた。

『また来ますね!』と声をかけ病室を後にした。

どれだけ泣いたのだろうか
奥さんの目の周りは赤く腫れていた。

もう二度と、生きて自宅には帰れない。




帰宅し、イタリア在住のマンマさんとスカイプ

周りで子供たちの賑やかな声がする。
笑ったり、泣いたり。

『生』を感じた。


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